シンプルなものが多いけれど、たまにどうしても目がいってしまうものがある
履くのに一手間かかりそうだな、
色、合わせにくそうだな、
買わない理由ばっかり呟いている時、それは
惚れちゃったということなんだけれど
*trippenの企画展「毎日をたびするように歩きたい」は明日から*
シンプルなものが多いけれど、たまにどうしても目がいってしまうものがある
履くのに一手間かかりそうだな、
色、合わせにくそうだな、
買わない理由ばっかり呟いている時、それは
惚れちゃったということなんだけれど
*trippenの企画展「毎日をたびするように歩きたい」は明日から*
キッチンに友人たちが集まって、わいわいと、ともに料理を作る。
うまかったり、下手だったり、いろいろだけど工程の全部が楽しくて、みんな笑いながら何かを作る。
平らげるのは一瞬だけど、思い出すとじんとくる。
そんな集まり、そんな人とのつながり。
過ぎてしまえば一瞬のことのようだけれど、じわっと身体が記憶する。
いつかこの日の意味がわかることはあるのかしら?
足取りも軽く、道をゆく。
誰かに会うと、にっこり笑顔で「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」とお声がけ。
青空を見上げて、思わず目が垂れる、口角が上がる。
晴れた日には明るい気持ちになるのはたやすい。
夏のあの日は、空が高くて、服も気持ちも軽かった。
空には鷲が飛んでいて、雲も青い海にぷかぷかと浮いているように軽かった。
寒い時には、そんなおもいでを思い出して暖をとる。
コートを着て、襟を立てて、熱いミルクティーをすすりながら、暖かい思い出を見つめて。
潔いデザインだな、と思う。足し算よりも引算の美学を感じる。
ARTS&SCIENCEの日常着の中でもFAKE SHIRTS DRESSは一見すごくシンプルな形。ごく普通のシャツに見えるところが清々しい。
実際にはボタンを開けると、中の布が繋がっていて円形状のプルオーバーになるのだ。方や脇の仕立てが素晴らしくて、長く着れるように丈夫な作りになっている。
それが一見してはわからないのが潔さに繋がっている。
着る人の着心地を重視して、飽きがこないようにごくごくシンプルに。仕立てと布を上質に。こういう服を探していた、そんな人たちが見つけてじわじわと広がっていった。ARTS&SCIENCEはそんなものづくりが信頼されているブランドだ。
その潔さ、私も自分の生活の指針にしよう。
今住んでいるところから遠く離れた異国や初めて訪れたところにて、なんだか懐かしさを感じたことはないだろうか?
西フランスの田舎町Melleを訪れた時の私がそうだった。
中世の頃からの建物が当時のまま保存されたこの町の道は、全てが石畳で丘の傾覆に合わせて曲がりくねっている。その田舎道を歩いていて、友人が驚きの声をあげた。
「あゆみ、あなたおかしいよ。道に迷わないし、方向もあっている。今日1日行きたいところを地図で一見しただけで間違わないで着いているじゃないの」と。
私は大げさなやつだな、と内心思い。
「え〜〜、普段そんなにひどかったっけ?だって小さな町だし、わかりやすいじゃない。大げさだよ〜」笑って言った。O型牡羊座の私は過去をすぐに忘れてしまうのだ。
実際私はその町に1週間ほど滞在したのだが、全く道に迷わず道案内人を勤めていた。当たり前に何がどこにあるのかを知っていた。その町を離れて、違う町に移ってから異変が起きた、また道に迷い出したのだ。
その日の夕焼けを見ながら私たちはワインを飲んだ。Melleで起こったことはなんだったのだろうか、と。
「そうね、確かに滞在中ずっと懐かしさに包まれていたかも。あの石畳の景色が映像になって私の中にもある感じ。過去生があるならあの町で生きていた時代があるのかもね・・・」
人生は壮大だ。海に沈む太陽を見つめながら私は静かに感動していた。
ふと、懐かしい景色のそのほとんどが、石垣と石畳の道だということに気づいた。ずっと石畳を見ながら歩いていたに違いない、毎日毎日。
「ああ、わかった。私ねあの町で郵便配達のロバだったかも」
「・・・・なんだか腑に落ちるね」しばし無言で私の顔を見つめてから、そういうと
友人はふっとかすかに微笑んで、南フランスの海に沈む太陽を見つめた。声を出さずに笑っているのは、肩の震えでわかった。
私は、言うんじゃなかったと、やっぱり茜に染まった海を見ながら声に出さずにつぶやいた。