*Calend Okinawaに連載していた田原あゆみの「暮らしの中の旅日記」から転載している過去の記録たち
沖縄の気候にウールの敷物は合わない。
去年の夏まで私はそう思い込んでいた。
つやつやのウールがもしゃもしゃと織り込まれたお気に入りの中近東の絨毯を持っているのだけれど、その観念が邪魔をして、中々敷く機会がなかったのだ。
Shoka:でお話会がある時に押し入れの奥から引っ張りだして使ったりする時以外は、春夏秋と押し入れの中で出番を待っていた私のかわいそうな絨毯。
去年の8月に開催した「赤木智子の生活道具店」の企画準備の時に、「ギャラリーONOのガベ」が展示品の中に入っていることを確認した。
その時の私の反応は、「え?沖縄でガベ(ギャベ)??」
ウールの絨毯はちょっと使えないんじゃないかな?好きだけど・・・。
と、乗り気ではなかった。
展示はしたいけれど、人気がなかったらギャラリーONOの小野さんに悪いなあ。
そう思った私は赤木智子さんへそのことを相談した。
その時に、ギャベの織られている地域の一日の平均気温差は40℃もあり、そのためそこのウールは暑い時には放熱してひんやりと、寒い時には保温して暖をとれるような特性を持っていることを知った。
こちらは昨日の企画展初日に旅立って行った、トルコのBERBER(ベルベル)と呼ばれる絨毯。
同じく、夏の暑い時にはさらっとしていて、冬はぽかぽかとぬくもりがあるいう特性を持っている。
ギャベは、手紡ぎの羊毛を草木染めしたあと織った絨毯で、おおらかにざっくりと織られているのが特徴だ。
また、油膜が毛を保護しているため、汚れにくく、お手入れが簡単なことからこの20年の間に人気が出たのだ。
そんなギャベの特性を知ってから、私は安心して生活道具店のギャベを迎え入れたのだった。
しかも、日本に初めてギャベを持ってきたギャラリーONOの小野さんが選んだギャベたちは、どれもこれも魅力的で、空間に置いただけでぱっとぬくもりのある空間が出来上がる。
企画展初日に訪れたキュートな彼女。
思わずごろんと転がって、その毛足の心地よさを味わいたくなるのです。
気持ちがいいよね。
子どもたちの身体や感覚はと手もすなお。
子どもたちがShoka:へやって来ると、すぐにギャベの上に直行して、ごろり転がったり、手で撫でたり、好きなことをしています。
写真の彼はゲームをしながらリラックス。
人を思わず笑顔にするようなおおらかな絨毯ギャベのあるところは、ぱっと花が咲いたような明るい空気が満ちるのです。
男の子のもたれている壁にかかっているのは動物の柄を織りこんだギャベ。
子供が無邪気に描いたような動物たちが並んでいます。
毛足も長くて、色も生き生きとしたとても状態の良いギャベ。
一体全体どのような生活の中から、こんな素直な絵柄が生まれるのでしょうか?
ギャベを見つめていると、はるか遠くの遊牧民たちの生活に心は旅立って行くのです。
現実に行ったことのない国だからこそ、心の旅は自由自在。
おとぎの国のようなハッピーな空想に、お昼寝時の寝顔だってきっとにっこり笑顔になることでしょう。
このギャベは、1950年代のOLDギャベ。
この頃のものは、遊牧民の人々が家の中に敷いて使うベットとして家族の為に織っていたもの。
なので、ペルシャ語で「ざっくりと編まれた」という意味を持つGABBEH(ギャベ)そのまんまの、雰囲気が残っています。
柔らかい毛足はふさふさとしていて、草木染めで染められた色は経年変化を経て、柔らかい表情をたたえています。
この額縁のついた四角い柄は「窓」を表しています。
「しあわせが風と共に窓からたくさん入ってきますように」、そんな願いを込めて織るのだそうです。
そんな話を聞くと、心がぬくぬくとしてきませんか?
そんなギャベを2ヶ月ほど前に持って行かれたある方は、ソファーとテレビの間に敷いてご満悦。
ある日気づいたら、全くソファーに座らなくなっていたそう。
ギャベの上に座ってくつろいだり、ゴロゴロしたり、あまりに気持ちがいいので報告しにきてくださいました。
この赤いガベはランナー絨毯として玄関に敷くのもよし。
私のおすすめは、こんなベンチやソファーの前に敷いて、クッションを置くこと。
きっと家の中にくつろぎの場、オアシスが出来るんじゃないかと思います。
アップにしてみて見ると、このような木の柄が。
「生命の木」Tree of life と呼ばれているこの模様は、木には花が咲き実がつくことから、家族の繁栄や健康を願うシンボルとしてとても人気のある絵柄なのだそう。
お花をつけた木が、輝くように並んでいます。
赤い色のギャベは、見ているだけで元気が出てくるものです。
楽しい活動的な空気が、家の中に広がって行く感じが見えるようです。
昨日は小野さんも一日在廊して、熱心にギャベのことを話してくれました。
敷いているのは、バルーチと呼ばれるキリムの一種。
とても細かい技術を駆使したすばらしい絨毯。
世界最高峰のキリムの一つと言われている珍しいものです。
ピーコックが織り込まれていて、キリムの平織りの中に、更に毛足の長いギャベのようなふさふさを織り込んで、立体的な凹凸がついているのには誰もが驚かされます。
近づいてみると分かるかな?
紺色のピーコックはふさふさとした立体的に起毛しています。
何年経っても新たな発見がありそうなほど、様々な絵柄が織り込まれている家宝ものの一点。
敷くだけではなくて、壁にタペストリーとして掛けてもきっとすばらしい空間となるのでしょうね。
昨日は「移動料理びと 胃袋」の関根麻子さんが焼き菓子を焼いてきてくれました。
次回は9日(水)に持ってきてくれるそうです。
心にぬくもりの広がるGABBEH展は14日(月)まで開催しています。
DMには13日までと記載していますが、台風で今日見ることの出来なかった人の為に一日延長することにいたしました。
とても珍しい布もたくさん届いていますので、この機会にすばらしい手仕事GABBEHに触れにいらしてくださいね。
GABBEH展
10月14日(月)
12:30~19:00
期間中無休(台風時を除く)
暮らしを楽しむものとこと
Shoka: