ある冬の朝

                        

Shoka: 

凍てつくような寒さが南の島にやってきたのは、わたしの引越しの最中だった。

丘の上の一軒家で、愛犬と一緒に住める家をずっと探していたわたしにとっては、庭が広くて日当たりと眺めのいいこの家にできるだけ早く越したかった。

冬の雨の中を朝から晩まで歩き回ったパリから帰ってきて、引越しの準備。そして東京へ出張へ行って、帰ってきた翌日から引越し。今考えると、気持ちに任せて身体に鞭打つようなスケジュールだ。

荷物を運び終わったその日の夜にドアのストッパーにと置いてあった大きな石に躓いて、見事に転んで顔面着地。したたか打ち付けて痛い目にあったのは、身体が「もういい加減に休んで頂戴」と起こした事故に違いない。

漢方の先生から後日聞いた話では、今年の冬の土用は一月十八日に始まって、二月三日に開けるのだそう。土用というのは、次の季節に合わせるために身体が毒素を排出したり、調子を整える時期なのだという。その時期には土に触れたり、身体をたくさん動かすようなことはしないでゆったりと過ごすことが大事なのだそう。まさにその真っ只中に出張へ行き、引っ越しをしたた私はずいぶん身体にひどいことをしてしまったのだ。

ただ、不幸中の幸いに土用の期間中に間日というのが設けられていて、その日は動いたり土に触っても良いとされているらしく、今回の間日は二十一、二十二日の二日間。わたしの引越しはその日にピッタリと合っていたのだった。

もしも土用の最中に引越ししていたら、きっと前歯が折れていただろうと、あとでぶるっと身震い。

自然のサイクルと身体は共鳴しているのは確か。土用が年に四回、各季節ごとにあることも今回初めて知った。これからはもっと自然と身体の声にちゃんと耳を傾けよう。そう心に刻んだ冬の朝。

東海岸から昇る朝日を浴びながら、丘の上の家にて

田原あゆみのInstagram

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