CALEND-OKINAWAに記事を掲載しました

                        

田原あゆみエッセイ

この記事は4月7日にCALEND-OKINAWAのShoka:の連載に掲載されたものです。4月15日から始まるmon Sakata展に向けて書きました。

この記事を読むとmon Sakataの服は、坂田敏子さんの人柄や彼女の視点がベースになっているからこそ、楽しく着れるのだということが伝わるといい名と思って書きました。そして、誰かが生涯をかけて続ける仕事の奥の深さや、人間味に触れることで、ますます日常は当たり前のものではなくて、ギフトのような時間の連続なんだということが私は分かってきました。

以下その気時の本文です。みなさま楽しい一日を!

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朝の身支度を整えようとクローゼットを覗く。

仕事に行くのか、友人とランチなのか、それとも海へ?
出張、ライブ、結婚式・・・

その日の気分や、出かける目的と場所を考えて選ぶ服のコーディネート。

今までにいったい何度何を着ようかと頭を悩ませたことだろう。

母の代から服を扱ってきた私にとって、mon Sakataの服は日常着の救世主となった。

 

便利で間違いなく合わせやすいカットソーたちは、袖の長さや着丈、色のバリエーションが豊富で着心地がすこぶるよい。
落ち着いた秋色は様々なブランドの服にすっととけ込み、オレンジ・黄色・ミッドブルーの印象的な色たちは、日常に華を添えてシンプルなアイテムたちを際立たせる。

 

一見シンプル。けれどポケットや股上・裾などにさらっと個性が息づくボトムスたちは、履きやすく楽しくて、気付けば今日もまた着ている。気がつけばそんなお気に入りのアイテムになっている。

田原あゆみエッセイ

10年くらい前までは、カットソーが日常着の人気者だったけれど、今はブラウスやシャツなどの布帛が中心。

忘れ去られがちなニットだけれど、mon Sakataのニットは抜群だ。
重ね着して、素材の違いや色の重ねを楽しむことが好きな坂田敏子さんが作っている服たちだから、写真のように袖丈、襟ぐり身頃に工夫がしてあって、コーディネートを仕上げた後のディテールが楽しいのだ。

 

袖丈の長いロンスリ(ロングスリーブ)のカットソーと、袖丈の短いカーディガンを重ねる。カーディガンの袖口はくるっとしていて、互いの素材感や造形を楽しめるようになっている。

ニットの裾の仕上げも糸の持つ柔らかさや個性が奔放に現れているのも好きだ。

私は着ている時に、カーディガンの裾のくるくるを指先で触って楽しんでいる。

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田原あゆみエッセイ

あら、坂田さんニットを留めているものはなんですか?

それはくるくると何かが巻かれたブローチだった。

カーディガンはそのまま着ると、ふちに表情があり、アクセントになる。
こうしてお気に入りのブローチで留めると、また印象が変わる。

mon Sakataの服の特徴の一つに、「余白」を残していることを感じる。

このシンプルな前秋のカーディガンのように、形を決めてしまうのではなくてその人が好きなようにアレンジできる余白を残しているのだ。

田原あゆみエッセイ

ボタンがついているカーディガンでも、その形は決まっているような、決まっていないような不思議な余白を感じるのだ。

着る人の身体のラインや、下に重ねるものの素材感や色、袖をまくるのか袖口のボタンをしめて仕上げるのか。
着る人が参加して、普段の動きの中で表情が変わる服。

 

mon Sakataの服は、日常の中で素材と遊んでいるような感覚になる。

田原あゆみエッセイ

「そうそう、田原さんこれ見たことあったかしら?」

そう言って坂田さんが持ってきた写真。

じっと見ていると、糸くずが集まってできたフェルトのように見える。

まさしくこれらの固まりは洗濯機の糸くずフィルターに溜まったmon Sakataの服のかけらたちなのだ。

地ならしで洗った布や、坂田さんの私服のお洗濯、製品の仕上げに洗いをかけたとき。布からこぼれた糸くずたちが、その時の色や素材のブレンドによって形も様々にぎゅっと固まった姿。

それを面白いと集めている坂田さんに、私は彼女の服作りの原点を感じた。

 

繊維の表情、配色の妙。
小さな糸くずの固まりに、mon Sakataのエッセンスが詰まっている。

坂田さんは素材を触るのが好きなことは前々から知っていたけれど、なんだか子どもの頃のただただ関心を持ってただただ見入る。その無垢な視線を素材に注いでいる坂田さん。

この仕事はどこを切っても、彼女の生涯の仕事なんだ。そう感じて、私はじんと来た。

 

田原あゆみエッセイ

その偶然出来た糸くずフェルトに合わせて、作家さんに専用の箱を作ってもらい納めている。巻頭の写真に写っている箱たちの中には様々な表情の糸くずフェルトたちが収まっている。

一つずつ専用に作ってもらったものだから何万円もかけたのだそう。
日常着の痕跡を、宝物にしてしまう。
この視点こそ現代アートの土台ではないだろうか。

 

田原あゆみエッセイ

この美しい色の写真たちはなんでしょう?

 

誰かと長くつき合っていると、だんだんと見えてくるものがある。今回の取材で、坂田さんと布や糸などの素材との結びつきが以前より深く伝わってきて、私の胸はジンとした。

坂田さんとともに過ごしたこの数時間は、私にとっては深く濃くて、とてもこの回だけで書き終られるようなものではなかった。

 

なのでこの話しは続きます。

vol2「坂田さん、39年間服作りをしてきて変わったことと、変わらないことはなんですか?」

こちらはShoka:のホームページに、4月13日頃にアップしたいと思います。

田原あゆみエッセイ

 

2012年と、2014年に開催した時の取材記事はこちらからどうぞ。

 

「mon Sakata がうまれる手」

 

mon Sakata のかたち

 

 

 

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