邂逅vol 18 2012/8/9

                        

道具百景 「赤木智子の生活道具店」より

2012.08.09

文・写真 田原あゆみ道具百景 「赤木智子の生活道具店」より

「あさちゃん、ガベの上ででまったりするとどんな感じになるのかな?」田原
「あゆみさん、やってみましょう」関根

赤木明登さんのお敷きの上に、新宮州三さんの漆の茶托を置いて、その上に壷田亜矢さんのカップを置いてみる。

やはりうつわや、生活道具達は使っているところをイメージして組み合わせると、お互いに生き生きと引き立て合うものだ。
赤いサンダンカの花が加わると、有機的な空気がふわーっと広がる。
何かしらお花を飾ると部屋の空気が変容する位、花は静かでパワフルな存在。
台風でかなりのお花が落ちてしまったけれど、明日には探してきてお花をこの空間に生けてみよう。
こんなに働き者の道具たちが溢れているのだから。
お花の生気で、この道具たちを照らしてみたい。

ああ、もう、このままガベのふかふかに、足をすりすりしながらお茶をいただきたい。
亜矢さんのカップはすっきりとしていて、手に馴染む。
素っ気ないくらいにシンプルだけど、手の平の中でしっかりと存在感がある。
何を入れてもおいしくいただけそうなうつわ。

新宮さんの漆は、とても不思議な雰囲気。
新しいのに、既に使い込んだような風格と、懐かしい時代の面影がちらちら。
変な例えだけれど、新しくて古いような、不思議な質感をしているのです。
今は茶托に使っているけれど、ナッツをいれるのも面白そう。

赤木さんのお敷きは、お盆のように色々載せてもいいし、お料理を載せても凛と様になる。
真ん中がへこんだ形と、盛り上がった形の二種類。
細かい凹凸のある表面はその触感も、指でも目でも楽しめる。

奥のお重箱は現代の家族のお重にはとてもいいサイズ。
行事の時にはしっかりとお重の役割を果たしてくれるし、お弁当箱にするのもいい。
普段の食卓でも、和のうつわとして彩りを添えるのに使うことも出来るのです。

「そうだ! 早川ユミさんのスカートは一つずつ違うんだけど、これ着てみない?」田原

「いいですよ~。着てみたかったんですよね」関根

どれどれ、似合うかな?

「あ、私結構似合ってる」関根

「何だかこのスカート着ると、こう動きたくなりますね~」関根

「いいね!笑顔見せて~、視線こっちね」 パシャ パシャ  田原

こんなとき関根は必ずおどけてみせる。
スカートのポケットが大きいのも好きらしく、くるっとまわったり、つま先立ったりと楽しそう。

最近パンツ派が多くて、スカートの需要が減っている気がする。
活動的で、機能的なパンツは動きやすく気軽なのだろう。

私もパンツをはく機会が多い方だけれど、スカートをはくと、時にちょっとだけ心もとない感覚になる。
スカスカするせいなのか、パンツのように身体をなぞった形になっていないからなのかな?
ちょっと何かが足りない感じを埋めようと、女性らしい仕草が生まれるのかもしれない。
頼りない感じが逆に余白になって、いろいろなものを受け入れる要素となっている、そんな気がする。

パンツが自立していて、私は大丈夫!と、とりつく島が無い感じがあるのに対して、
スカートには、ちょっと誰かの手を必要としている間口の広さがある。
スカートは社会に向けて開いているドアなのか。
想像は勝手な世界へと広がっていきます。
一人スカート哲学。

スカートにもいろいろな形がある。
ミニのタイトなスカート・ミニのフレアー、ミディアム丈のタイトにセミフレアー・ロングのタイトやサロン・ギャザースカート・etc etc

今回入って来ている早川ユミさんのスカートは、ロングのセミフレアータイプ。
はいた人をみていると、こまめに動く働き者の気配が漂ってくる。
そんな人が好んで着るのか、着る人をそんな気分にしてくれるのか。
きっとその両方なんだろう。

野良仕事をしたり、何かを縫ったり、お掃除したり、雑巾がけをしたり、ほうきで些々ささーっとその辺を掃き出したり。
足がこまめにちょこちょこちょこっと動いて、あれをこなして、これを片付けてと、こまめに動いている姿がしっくり来るのだ。
早川ユミさんの大地に根を張った生き方が、ちくちくと縫い込まれているのだろう。

そんな気配を察知したのか、それとも私の無言のオーダーを受け取ったのか、関根はささっと和帚をかけています。
白木屋中村伝兵衛商店の小さな和帚。
柿渋が塗られたちりとりもとてもシンプル。

壁にかけておいてもそこがぱっと明るくなるような、絵になる姿。

麻子さん演技派ですね。
ふふふ。

ドイツ在住のリー・ヨンツェさんのすっきりと簡潔この上ないお皿。

赤木智子さんから、
「うつわだけをみた時は、きれいだけれど私の使う感じじゃないな、と思ったの。けれど、実際にお料理が盛られて出て来たのをみたら、も~~~う、素敵で!それからはこればっかり使っているんですよ」
と、聞いていました。

「そうそう、何かを盛りつけてみようよあさちゃん」田原

小さなマンゴーと、豆苗を。

・・・・・なるほど。
ぱっと、盛りつけた料理が前へ出てきます。
うつわが料理をメインに押し出しながら、品のいい背景となっている。
シンプルなのに、生気と力強さを感じる。

ドイツ在住のリーさんに会ってみたくなる、そんなうつわです。
とてもお料理が上手な方なんだそうです。

空飛ぶ魔法のガベの上に、新宮州三さんの栗盤と大村剛さんの片口を置いてみたら、寝そべって気持ちだけでも遠くへ飛んでいってしまいそうな景色となりました。

お酒を飲んでもいいけれど、このガベの上ならハーブティで深くゆったりと寛ぎたい。

お盆は使ってみるととても便利。
うつわとしてそのままお料理を載せてもいいし、こうやって一人分の寛ぎセットを作って家の中の今日の癒しの場所を求めて旅が出来る。
ほんのささやかな小さな旅。

この片口は、指で感じる肌の触感がいい。
冷たい飲み物が合いそうだ。
きりっとした形。

寛ぎタイムで使っていても、そのきりっとした形があるとだらしない時間になることはなさそう。

新宮さんの漆の箱を、赤木明登さんのお盆に載せて。

ざらっとした肌は不思議な質感で、「古くて新しい」そんな言葉がよく合う風情。

言葉は不思議だ。
相反するものをつないでも、存在する言葉としてしっくりと収まる。
この箱も、「きっちり」と「揺らぎ」がいい具合に収まっている。
新宮さんの人柄だろうか。

智子さんが、「新宮君は、本当に個性的で面白い感性の人なの。それが形になっているのよね~」と言いながら、この箱をそっと持ったのを思い出す。

いつかの誰かの為に存在しているこの箱には、一体何が入れられるのだろうか?
この文章を読んでいるあなたなら、何を入れたいですか?

九州から送られて来たマスカット。
なんて瑞々しくてうつくしいのだろう!
赤木明登さんの漆のお盆に抱かれて。

漆はとても静かなうつわだと思う。
特に黒い漆器は深い静謐な印象を感じる。
そこに置かれた料理や食材がなんと活き活きと映えることか。

漆器の肌も、はち切れそうなぶどうの色との対比で、やはりうつくしく静かに光っている。

みている私の心も静かに深くくつろげるのだ。

人の心は波打ったり、広がったり、萎縮したり、乱れたり、こぼれたり、溢れたりと様々に景色が変わるもの。
けれど何かの行為や、目に入るものに集中することで静まってゆくことがある。
「見る」という行為を通して、その視点に集中することで、鎮静し心と呼吸が調和してくる。
そうすると集中しているのに、感じる世界が広がるから不思議だ。

いいもの、そして大好きなものを持つことで「見る」機会は増える。
自分の好きなもの、触れていたいものが身の回りにあるということはとても素敵なことだ。

今朝、久しぶりに寝坊をして、陽射しが明るくなってゆくのを寝そべってみていた。
少しずつ陽が射してきて、ガラスや陶器の肌が目覚めてゆく様子を見ていたら、二度寝してしまったのだ。
深くゆったりとした睡眠の後、私は時計を見てあわてて飛び起きた。

頭は「あら~寝坊した!掃除しなくちゃ、そうだ大工さんが来るんだった!あ、忙しいところに家族が訪ねて来ちゃって、私の原稿はどうなっちゃうの?」とせわしない。

けれど、たっぷり休んだからだと、心はどっしりと動じていないのも一緒に感じながら、こうしてせっせと言葉を連ねる。

一つ一つが、いつかの誰かの為に存在していることが写真からも伝わって来て、愛おしくなってくる。

上泉秀人さんの大きな湯のみは、触ってみて欲しいものの一つだ。
手の中でしっかりとした存在感。
触感がとてもいい。

氷を浮かべて、麦茶をごんごん飲めそうだし、キュウリやにんじんをスティックにしてこの中に立てて、味噌をつけて食べたっていい。
とにかく、手に持つことでばーんと良さが伝わってくる。

しのぎも、締めと抜きが秀逸だ。

さあ、色んなことをつらつらと巡らせながら、一日と半分。
今日も開店の時間がやってきました。

大好きなガベは、1950年代のもの。
アンティークで、草木染めの色がいい具合に柔らかくしっとりとしている。
ガベはたくさん踏まれて使われることで、しなやかに馴染んでくる絨毯だ。

一緒に歳を重ねて、いつかはこのガベを好きな誰かの手へ。
そう、ガベもまた私たちより長生きなのだ。

私がそんなことをしている間。

関根は・・・

「写真苦手なのに色んな役をして、年下は辛いよな~。およよ」と。

秋野ちひろさんの金属の欠片のペンダントが、なかなかいい味ですよ関根さん。
今度は、何を着ようかね?

今日も関根と二人で、道具たちと一緒にみなさまをお迎えいたします。

暮らしを楽しむものとこと
Shoka:にて

「赤木智子の生活道具店」開催中

8月12日(日)まで

追伸。
他にもたくさんの道具たちが届いているのですが、こちらで紹介するにはかなりの誌面と皆さんの時間を
いただくことになりますので、続きは随時ブログなどでお知らせしていきたいと思います。
ブログ:http://shoka-wind.com

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「赤木智子の生活道具店」 Shoka:

2012年 8月3日(金)~12日(日)12:30~19:00
沖縄市比屋根6-13-6 098-932-0791

「日日是好日」をモットーとしているという、赤木智子さんは、エッセイストで、塗師 赤木明登さんの伴侶。
家族とお弟子さんたち、次々と訪れる来客を迎える輪島での暮らし。
新潮社から出版されている「赤木智子の生活道具店」を読んでいると、食べること、着ること、住まうこと、
そのすべてを支えてくれている生活道具たちと、まるで友人のように共に暮らしている赤木家の様子が生き生きと伝わってきます。
大好きなものと暮らしていると、一日一日が特別に感じられる。
智子さんが選んだとっておきの生活道具たちを迎えて、活気ある夏到来!
全国で人気の「赤木智子の生活道具店」沖縄で初めての開催です。

入荷するラインナップは以下のものです。
みていてわくわくしませんか?

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及源の南部鉄フライパン
早川ユミのスカート
白木屋伝兵衛のちりとり・ほうき・たわし
上泉秀人の大きな湯飲み
小野哲平の小皿
花月総本店の原稿用紙とカード
mon SakataのTシャツと小物
大村剛の小さな片口
安藤明子のよだれかけとガーゼもの
晴耕社ガラス工房のコップ
リー・ヨンツェの角皿
野田琺瑯の洗い桶
ギャラリーONOのガベ
井畑勝江の湯呑み
佃眞吾の我谷盆
ヤオイタカスミの子供服・ワンピース
輪島・谷川醸造の「塩麹くん」「米麹みるくちゃん」
秋野ちひろの金属のかけら
広川絵麻の湯呑みと蓋物
岩谷雪子のほうき
村山亜矢子の塗り箸
而今禾のパンツ・スカート・ワンピース
壺田亜矢のカップと片口
新宮州三の刳りもの
丸八製茶場の加賀棒茶
高知谷相の和紙
輪島のほうき
赤木明登のぬりもの
輪島のお菓子

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