*Calend Okinawaに連載していた田原あゆみの「暮らしの中の旅日記」から転載している過去の記録たち
5月18日から始まるミナ ペルホネンの企画展、「piece,peace!」に向けて、私はミナ ペルホネンとの出会いと、そこからもたらされた影響について思いを馳せてみた。
様々な記憶の断片が頭の中に浮かんでくる。
バラバラに存在しているその欠片をかき集めて、そこから感じるもの、Shoka:や私の生活の中にもたらされたものを拾い集めてみたいな、と思ったのだ。
欠片を集めて、つないでゆくといつか一つの絵になるだろう。
それはまだ先のことだろうが、そこへ到る過程をこの記事で意識してみたい。
人との出会いから人生に受ける影響は大きい。
人は日々出会いと別れを繰り返しているが、そこから大小様々な影響を受け続けている。
もしかしたらそれは生身の人との出会いだけではなく、時間軸を越えた著作物を通しての出会いかもしれないし、絵画や彫刻を通して触れる誰かとの間接的な出会いかもしれない。
その出会いの前と後では、人生の質が変わるような、そんな出会いが私たちの人生にはちりばめられている。
私も、様々な人からあらゆる影響を受けて今がある。
ミナ ペルホネンのデザイナー、皆川明さんも私に大きな影響を与えた中の一人だ。
HPを見ているだけでも、
国内外での年2回のコレクションの製作と発表
白金台店と京都店で行われている予約会
様々なデザイナーや作家とのコラボレーションによる製作と、その展示会
Shoka:のようなギャラリーや百貨店との企画展やトークイベント
と、かなりの仕事量をこなしていることが分かる。
その一つ一つを見ていても、それにまつわるデザイン、企画、制作、展示とかなり多忙な日々を送っている人だ。
きっと分身したいと思うことがよくあるのだろうな、と思ってしまうほど。
1分1秒も惜しいだろうと思えるような時間の流れの中で暮らしている皆川さんなのに、対面するとその時間はゆっくりと流れているように感じられるのが不思議だ。
頭の回転の速い人だし、決断も早い。
けれども、言葉を選んで意識して紡ぐせいか、ゆっくりと話している感覚になる。
そして、出会っている時間にとても誠実に対峙しようとする人だから、その時間の中に共に「居る」という感じが場にいる人々の中に充ちるのだろう。
向き合っている今に集中すると、その時間の画素数が上がるような感覚になる。
例えば、サインをお願いされるとゆっくりと丁寧に絵を描いてくれる。
サインに並ぶ人の列を見て時間配分をすることもなく、向き合っている「今」に集中してそこから湧いてくる感覚をペンでなぞっているように見える。
「さらさらっと書けるのに、どうして、そんなにゆっくりとサインをするのですか?」
ある人に質問されて、
「さらさらっと書くと2~30秒で終わるかもしれないけど、意味なく流れる2~30秒より、意味のある3分の方がいいと思うんです」
この言葉に、この人の生きる姿勢が集約されていると私は感じています。
forest parade と名付けられている37種類のモチーフが連なるこのレースは、皆川さんが描いた絵の線一本一本を 職人さんがスキャナーで読み込んで、プログラミングされた後水溶性の紙布に刺繍される。
一本の針が37のすべてのモチーフを仕上げるのに3日かかるというほど時間を重ねて仕上げられた後、布を溶かして花や木や鳥達のレースが仕上る。皆川さんは「機械と僕と職人さんのコラボです」と。
今起こっていることの中にちゃんと居る、ということ。
目の前で起こっていることをきちんと見て、感じて、思考する。
そしてそこからぶれずに発信し、ものや人と交流する。
これは中々大変な事。
外からも中からも情報が溢れ来る現代の生活の中では、頭は過去の出来事に釘付けで、身体は先を急ぎ、心は未来へ飛んでと、バラバラになっていることの方が多いのだから。
その慌ただしく流れている日常の中で、きっと私たちはバラバラになった自分の感覚や思考が一つになる地点を、いつも無意識に探しているのかもしれない。
記憶を辿りながら書いていて、ああそうか、と思うこと。
皆川さんが、ちゃんと「今」に居て発信しているから、私達はその言葉に引き込まれるのだと。
友人の結婚式に出席した時に、同じテーブルに同席したことがきっかけで皆川さんと知り合ったのだが、その時の皆川さんのスピーチに引き込まれて、私はミナ ペルホネンに興味を持った。
言葉はほとんど覚えていないが、その時に感じた自分の感覚はよく覚えている。
皆川さんがスピーチしている、その場と時間に時間に釘付けになったのだ。
その場に誠実に向き合って言葉を紡いでいる姿そのものに感動したのだ。
サインをしてもらっている人達もきっと同じような感覚になるのだろう。
受注会で皆川さんに出会った人も。
誰かが自分の存在にちゃんと向き合ってくれている、その経験は時間の多少を越え喜びに繋がっているのだ。
piece, peace!
ミナ ペルホネンはテキスタイルから作っているアパレルのブランドの一つだ。
ただ、テキスタイルには詩のタイトルのような名前がついていて、服を作った後のハギレも最後まで大事に使い切るという姿勢は他に類を見ない。
その様々な形のハギレ達を使って、クッション・バッグ・服・小物等を作っているのが piece, という企画だ。
そこには、本当に胸踊るようなものたちが溢れている。
photo by Koji Honda
小さなハギレたちはバッヂになって、誰かにつけてもらうのを待っている。
その一つ一つに名前があって、表情も少しずつ違う。
photo by Koji Honda
ハギレを組み合わせて作られたバッグ。
こうやって大切に使いきられる背景には、プロダクトの生まれるところから未来まで、きちんと向き合う真摯な姿勢が感じられる。
このうさぎクッションもまた同じように、平面のハギレへ思いやるきもちが吹き込まれて形が出来たのだろう。
今は、うちのかわいい姪っ子のうさぎちゃんになった。
このpiece,のデニムは、私の親友のお気に入りだ。
自分自身で居ることを受け入れて、今に誠実に向き合って発信する時、一人の人間の存在は個人を越えるんだとつくづく思う。
皆川さんがミナ ペルホネンを通して表現するものとこと、どこをどう切ってもやっぱりミナ ペルホネンなのだ。
5月18日(土)から26日(日)まで Shoka: で、ミナ ペルホネンの piece, の企画展を開催します。
piece,bag や one mile bag・リメイクTシャツやうさぎクッション・Thank you very badge など、
ミナ ペルホネン ピース,ならではのアイテムたちがShoka:に並びます。
それから、開催に伴って、5月17日に皆川明さんと一緒にバッグを作るワークショップと、同日夜にはトークイベントをすることになりました。
パソコンや本を前にして、机上で学ぶことよりも、人から直接学ぶことの方が学ぶことは深くてその後も広がってゆくと私は信じています。
一方的に与えられる情報よりも、場の空気・表情・物腰・言葉・声の響きなど、場を共有することで得るものは半永久的にその人の中で育つものです。
自分に目覚めて、今を大事に行きている人は種を撒く人なのかもしれません。
いつか発芽する環境が育った時に、芽吹いてその人とともに育ってゆく。
もしかしたらもう種は自分の中にあって、その環境に光を注ぐ人の、と言った方がぴったりなのかもしれません。
私の文章を読んで、行きたい!と感じた方は是非時間を作っていらしてください。
時には思い切って行動に出ないと中々、変化を促すような体験は得られないことも多々あります。
がんばって!
詳細は以下のようになっています。
自分が暮らした時間の断片がいつか一つの絵になろうと、集まっている。
その過程こそがとてもすばらしいと思います。
私のような行き当たりばったりのタイプは、今目の前にある欠片を作り続けて、ある日気づいたら一つの絵が出来ている、そんな感じなのかもしれません。
皆川さんは、未来を描ける人の一人。
その未来の欠片を意識しながら一つずつ作っている、そんなふうに私からは見えます。
それもまたとても興味深く、感動的で人の生き様ってそれぞれきれいだなと思うのです。
終了しています「piece, peace! 皆川明氏トークイベント」
日時 2013年 5月17日(金曜日)
時間 19:00開場
トーク 19:30~21:00
会場 Shoka:
参加費 500円(駐車場からのタクシーの送迎代金込み)
*トークイベントの方はまだ定員に達していないため申し込み可能となっています*
お申し込み方法
1.参加者名(全員のお名前を書いてください)
2.連絡先(ご住所・携帯電話番号・メールアドレス)
3.「トークイベント参加希望」と必ず書いてください。
暮らしを楽しむものとこと
Shoka: