*Calend Okinawaに連載していた田原あゆみの「暮らしの中の旅日記」から転載している過去の記録たち
昔々
まだまだ素材の特徴も、お洗濯法も理解が足りなかった頃。
かなり思い切って買った、とても上品で着心地の良いヨーガンレールのウールの白いロングガウンコートを、町のセルフランドリーの大きなタンブラーで洗った。
ぎゅうぎゅうに詰め込んだ乾燥機で乾かしたあと、私は衝撃を受けた。
ロングコートは、半分に縮んでいたのだ。
何とも悲しい思い出だ。
しかしこのコートは、元があまりに良かったためハーフコートとしてその後かなり長いこと着ることが出来た。
もちろん最初の柔らかな風合いは無くなってしまったし、優雅さも消えてしまっていたけれど。
現在は寒い日の部屋着として健在だ。
同日一緒に洗ったふわふわのアンゴラのカシクールは、毛が潰れてからまり、輝くようなオーラが消えていた。
思い切りだけはあったが、知恵とお金が足りなかったあの日の衝撃は今でも私の中で生きている。
翌日職場にそのアンゴラのカシクールを着て行った。
職場の先輩は「おはよう~」といいながら視線は私の服に釘付け。
「あら、その服何だか長旅でくたびれ果てた犬みたくなっちゃったね」と。
表現力に長けた上司だった・・・・色んな意味で衝撃的な思い出だ。
洗濯にまつわる失敗は誰しも一つや二つはあるだろう。
妹が大事に着ていたセーターを、母が洗濯&乾燥機。
子ども服のように小さくなり、妹が母に文句を言ったら激しく逆切れされていた。
私は文句は言うまい、そう心に誓うほどの逆切れだった。
どうしようもないほどの縮み様に、「どうして洗濯かごに入れたのよ!」と、母も怒るしか無かったのだ。
みなさんも、家族の思い出の中に似たような経験は無いだろうか?
写真のヨーガン レールの赤いカットソーブラウスは、ウールの地にシルクの糸で手編みされた刺繍が丁寧に施されている。
もちろんドライクリーニング表示がついている。
直に肌につけずに、洗えるものを重ね着して極力クリーニングの回数を減らす工夫をするのは生活の知恵。
そして工夫がおしゃれにつながることも。
同じ刺繍でもこちらは、ミナ ペルホネンのランドリーのシリーズ。
お家でお洗濯出来る日常着として作られている。
手洗いモードにした洗濯機に、おしゃれ着洗い用の洗剤を入れて洗ったり、人によっては手洗いする人もいるだろう。
洗うと、刺繍の部分が少し収縮して布地からふっと立ち上がる。
そうすると刺繍に立体感が出て来て、洗うほどに表情が変わってくるのだ。
色違いの刺繍。
テキスタイルの名前は twins 。
一対の花達が揺れているような、降って来るような。
眺めているとそれぞれの花の表情がいきいきと語りかけてくる。
その静かなささやきに耳を澄ましたくなる。
前と後ろを紐で結んで切るエプロンドレスは、妊婦さんもかわいく着れそう。
「自分の着る物はお家で洗いたい」
やはりそう思っている人は多いと思う。
その希望を汲んで、minä perhonen Laundry のシリーズは生まれた。
現在Shoka:で開催している「日常着展」には、他にもランドリーの服が揃っている。
minä perhonen Laundry dress ” turk”
大きめのポケットと、丁寧に作られたボタンが気持ちをそそる。
着心地の良い綿素材。
冬は重ね着をして、春夏には一枚で。
ずっと、くたくたになるまで着たい。
そう思ってしまうような愛着の湧く布。
フィンランドの古都”Turk トゥルク”の、さわやかなでおおらかな風が表現されたストライプなのだそう。
その他のラインアップはこちらでどうぞ。
http://shoka-wind.com
こちらはお家で洗うのはまず止めた方が良さそうなカシミアのストール。
カシミアの毛はとても細くて繊細。
だからこそあの柔らかさと肌触りの良さ、暖かさがある。
ウールやカシミア等の動物性の繊維は、人の毛髪と同じようなキューティクルがあるのだそう。
摩擦が起こった時にはその鱗状の部分が絡み合い、互いにかみ合ってはなれにくくなることで毛玉が作られるのだとか。
なので、カシミアのストールアやニットを持っている方はその気持ちのよさを維持するの為に、摩擦には充分に気をつけてください。
ヘビ革やメッシュ素材のバッグを避け、すべすべしたものを持つことをお勧めします。
それでもやっぱり家で洗ってみたい。
クリーニング表示だって洗えるものはチャレンジしたいという強者は、こちらのサイトに洗濯方法が載っています。
自己責任を以て、どうぞ。
花王家事ナビ
ちなみに私もカシミアの大判のストールやニットも持っています。
ストールは使った後、室内に干してついた匂いや水分を飛ばします。
地肌に直につくことが少ないストールは、滅多にクリーニングに出すこともないです。
からっとしたお天気のよい日に、たまに短時間虫干しをします。
*あまり日に長時間あてると退色の原因となるのでご注意下さい*
臭いかな、とか、何だか重たい気がする洗いたいな、と思った時がクリーニング時、そう思っています。
同じ素材でも色が違うとこんなに表情が違います。
フリンジはどんな素材で作られていても、何だかかわいくて好きな人も多いはず。
このストールはARTS&SCIENCEの非常に使い勝手の良い、正方形のカシミアのストールです。
ARTS&SCIENCEは実は洗えるものを多く作っています。
ドライマークは非常に少なくて、一部の革製品やウール素材を除いて殆どが家庭でお洗濯出来る素材になっています。
「道具としての衣服」というコンセプトの元に作られた服たち。
スーツでさえも手洗い表示がほとんどです。
私もパンツを愛用していて、もう何度も洗いましたがかなりいい感じです。
今一番履いていいるパンツがARTS&SCIENCEのジョッパーズ。
このブランドの仕立てと素材の良さは、太鼓判を押せます。
こちらはその仲間のパンツとジャケット。
綿麻のヘリンボーンの織り地にカットソー素材の裾がついたニッカーズパンツ。
裾の部分を折り曲げて履くとまた全く感じが変わる。
洗うと風合いが増して肌になじんでゆく感触がいい。
重ねると暖かく、単体で着ると風通しのよい素材だ。
綿麻素材のネル。
ネル素材は私が子どもの頃にはパジャマでよく使われていた、思わず肌をすりよせたくなるような心地よさ。
そのネルをこんなにスタイリッシュにジャッケットにするところは、さすがARTS&SCIENCE。
シンプルで無駄の無い形は飽きがこない、日常着の定番になりそうだ。
軽い素材のいいところは脱いだ時に分かる。
軽いものは持っていて負担が少ない。
シワの目立たない柔らかさが既に備わっているのもいい。
ARTS&SCIENCEの縫製の良さを物語るのにもってこいの話しがある。
先日ARTS&SCIENCEの生デニムを購入して帰ったある友人の話しだ。
パートナーには内緒で買ったデニムを、何度か着た後に外で陰干しをしていたのだそう。
そこへ娘がやって来て、「パパが、おかあさんデニムを買ったのかな?って言っていたよ」。
ドキッ。
その後顔を合わせて聞かれた時につい、「もらったのよ~」、と言ったのだそう。
友人が太って一度も着ていないというデニムをもらったの。
と。
そうしたら、服に関して全くの音痴だと思われていたその旦那様は、
「これはとてもいいジーンズだよ。ほらみてご覧、この縫い目の所」
と、デニムの後ろポケットから股上のあたりを指差して説明しだしたそう。
「とても縫製がいいじゃないか。僕の持っている安物のデニムとは比べ物にもならないよ。大切に着た方がいいね」
そう言われて、嬉しくなった友人はShoka:へ報告に来てくれたのでした。
まだあったことの無い友人の旦那様の顔が見たくなるようないいお話。
ありがとうね、Kちゃん。
私自身は実はあまりデニムが着こなせなくて、自分らしく着こなしている人にとても憧れを感じてしまいます。
そんな私でももちろんデニムを3本持っています。
デニムほど世界中で愛されている日常着は無いでしょう。
履き込むほどに、自分の一部となるようなそんな衣服の代表といえるデニム。
この形はすっきりすらっとしていて、スタイルが良くみえるのが特徴だそうです。
もちろん、試着されたみなさんのスタイルも良かったのでしょう。
私も後でこっそり試着してみたいと思っています。
minä perhonenが出している always という名前のついたデニムたちも、日常を楽しく過ごせる形と素材。
ずっと履き込んでいるデニムを着てShoka:を訪ねてくれた、ある方はこんな風に履いていらっしゃいました。
大好きな形だからと3本同じものを持っているそう。
こちらは一番履き込んでいる3年もの。
嬉しそうにその心地の良さと、肌へのなじみ具合を説明してくれました。
私は何よりも、嬉しそうに楽しそうに話す彼女が一番素敵に見えたのでした。
自分の「好き」をより多く知っている人はしあわせだな、と思います。
しあわせな人が夢中になって自分の好きを話していると、その楽しさが伝染して来て、聞いている側までしあわせの魔法にかかってしまいます。
しあわせならなんどでも伝染りたいものです、ね。
さあ、今日も一杯のお茶をいただいて、お仕事開始。
誰かが自分のお気に入りと出会う姿を目撃したいと思います。
好きな服を着て、自分の心地よさを確保したら誰に会っても、どこへ行っても嬉しいもの。
お茶は、無農薬のレモンの果汁を搾ってハチミツを入れていただきました。
たまにゆったりとした時間に、お茶の時間を過ごせることもあるのです。
そんな時には比屋根(ひやごん)のオアシスShoka:でゆったりと休んで行ってくださいね。