今年、私に贈った贈り物 3

trippen Shoka:

旅行に行くととにかく歩く。

沖縄で全く歩かない生活を送っていることへの懺悔のように、電車を避けてまで歩く。

もともと歩くのは好きなのに、私の沖縄での生活は立つのは足で動くのは車、と、役割を分担しているかのようだ。

なので旅というと靴が実に重要な乗り物になる。私の足は幅があるので、合わない靴を履いているとすぐに歩くことが苦痛になってくる。

靴が好きなので、長年この仕事をしている中色々持って入るのだけれど、歩かない沖縄の生活にはいいけれど、旅行の友には役不足。

trippenの靴に出会ってから、旅が快適になった。

今までのように旅先で足が痛くてたまらなくなり、服に合わない靴を買うはめにならなくなったし、買ったはいいもののやっぱりその靴も合わなかったというがっくり落胆もなくなった。

この靴はニューヨークに行くことを口実に、購入したtrippenのBOM。気に入っている。

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大地を踏みしめ、その大地を力強く漕ぐように歩く時、風が頬をかすめ、土やアスファルトの濡れた匂いが漂い、草の香りがする。身体と感覚と自覚が一つになって、生き生きとしてくる。

車に乗っていたらそんなことは起こらない。

わかっている、わかっている、色々いいのもわかっている。

さあ、今日と明日は石垣島へ。

きっと海辺をたくさん歩くだろう。

よろしくね、私の脚とtrippen。

 

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今年、私に贈った贈り物1

ヨーガンレールShoka:

今朝はこのことを書かなくちゃ部屋を出ていけないな。

カレンド沖縄の記事用に取っておいた写真だけれど、どうしても書きたくなって抑えきれない雨の朝。

黄色いウールのストールは今年の9月末に手元に置いておきたくて購入しました。

ヨーガン レールさんが刺繍されていたから。

見ていると、庭仕事をせっせとやっていた姿や思い出がよみがえってくる。

ある日、ヨーガンレールさんの庭づくりを手伝った。

雑草を抜いていたら、

「ほとんどの人は、何を残して、何を抜いたらいいのか全くわかってないよ」

強い口調でそう言って、じっと私の目を見るレールさん。

「このヒトにはこんなに可愛い花が咲くのに。この醜いものたちを抜いて欲しいだのに。あの人たちはそこらじゅうのものを全部抜いてしまうよ。そっこらじゅうが丸裸になるよ!」

怒っているレールさんは、感情を込めて言い放った。あの人たちというのは、農園で働いているおじさまたちのこと。

 

・・・・・自分の好みだね、レールさん。それ、レールさんにしかわからないね。

心の中でそう呟く。

きっと、農園で働いているおじさまがたはその微妙なレールさんの好みがわからないんだろうな。頭の中でそういうことを考えながら、

「ほんとだ、こんなに小さいのに、可愛い花をいっぱいつけているね」

白い小さな花たちを見て、今度は言葉にして呟く。その小さな花たちをそっと撫でる。そのあとは、すっと静けさが戻ってくる。

「あなたがずっと前に持ってきてくれたあの子に花が咲いたよ。あなた白い花だと言ってましたけれど、赤でした」

・・・・・あら、そうだったかしら?失敗しちゃったの?私。

それは言葉にしないで、残念そうな表情をして私は笑う。レールさんは白い花を当時集めていたのだった。

「大丈夫よ。可愛い花でしたから」レールさんはそう言うと、楽しそうに少し恥ずかしそうに笑った。

その時に言葉に出したことと、出さなかったこと、レールさんの表情と声音、島の植物の緑の香り。その全てがこの刺繍に重なる。レールさんとの思い出は、綺麗で、美しくて、お互いのいろんな感情がそこに息づいていて、いつもちょっとだけ笑える。だから思い出すととても切なくなる。

私はこのストールを大切にするだろう。

 

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新古共良

trippenbom

うれしい再会を果たした彼女が広島から履いてきた12年ものの、trippen BOM。

なんていい風合いなんだろう。古くなった皮が飴色に光っていて、たくさんの思い出でいいお顔。

きっと履いている人が思いもよらないほどたくさんの記憶をストックしているんだろ。古いものには味わいがある。

私の酷使しているtrippenの靴たちを、今日はブラシで磨いてあげよう。

今日からまたいつもの靴が私を乗せて、旅に出る。

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誰かが息を吹き込むのを待っている、無垢。

それもまたいいものだ。

trippenの靴たち

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はじまりはじまり

皆川明 

今日の12:30に「シゴトアソビ」が始まります。

昨日は展示を終えて、みんなで大嶺實清先生の工房へ。

いつもながら實清先生のお話は心に響き渡り、みんなでエネルギーを蓄電しました。

木工デザイナー 三谷龍二

陶作家 安藤雅信

ミナ ペルホネンデザイナー 皆川明

三氏とも、遊び心に燃えています。

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道しるべ

ヨーガンレール

彼はとても魅力的な人だった。

誰の前でも態度を変えず、正直で、ドキッとするような事も言ってのける。

天才的な目利きで、彼と一緒にいると景色が変わるような体験を何度も味わった。チャーミングで、わがままで、生産力に溢れた彼の生きる姿勢には目を見張るものがあり、彼の人生は常に人の期待を上回るものを作り出すパワフルな力が満ちていた。うつくしいものを知っていて、服の中に自然の美を写し、自然の色を表現し、ヨーガン レールというブランドを通して私たちと、彼のギフトである美意識と気高さを分かち合ってくれた。

そして彼は、ものをつくることの限界を知る謙虚さも兼ね備えている人だった。自然のうつくしさにはかなわない、と。

自分自身を迷い無く生きる人間として心から敬愛して止まない彼が旅立って、私は今道しるべを失った事を、ひしひしと実感している。

23日に不慮の事故で、先に旅立ってしまってから、空を見ても、海を見ても、植物の緑色を見ていても、彼の事を思い出し、さみしくてたまらない。

ヨーガンレール

いつも私の前を遠慮なくぐんぐん歩く人だった。

出会ってからずっと彼に追いつくようにと、自分を磨いてきたような気がする。こんな人に巡り会えて、少しでもそばに居れた私は幸運だ。彼からいただいたものは膨大で、まだまだ計り知れない。

それをちゃんと社会に差し出して生きる事、それが私の彼への恩返し。私が旅立つ時に、思いっきりの笑顔で再会できるよう、私はこの人生を大切に生きよう。

 

ヨーガンレール

松屋銀座では目利き展を開催していたそうで、そこにはレールさんのコレクションもでていました。

彼の天才的な目利き力、そのコレクションにたくさんの方が訪れた事だろうと思います。与那国島の小さな貝殻のコレクションは一緒に拾ったものなので、私も思い出に欲しいものでした。

そして是非、彼自身が編集し投稿していたババグーリブログを覗いてみて下さい。

そこに掲載されている写真はレールさんが自分で撮った物です。旅の写真やいろいろ、彼の世界観に触れてみて下さい。

なお、ヨーガン レールさんの意志を継ぎ、ヨーガン レール本社の皆さんは一体となって今後もいい物作りをしてゆく決意を固めています。私も心から応援しています。

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